第12章 溺愛執事の恋愛事情
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「……疲れたぁ」
スーツのまま、背中からふかふかのベッドへと体を沈めた。
今日は朝から飛行機飛び乗って、その足でたった今挨拶をしてきたところで。
このまま今日はこのホテルへ泊まり、明日にはまた帰国しなければならない。
ならない、のだか。
「………そこで、何してんの」
いつまでたってもこちらへと来る気配のない彼女へと、体を起こして視線を送れば。
さっき入ってきたドアのそばからその位置はさほど変わっていない。
「皇?」
財閥令嬢である彼女が、今さらスイートルームにびびるはずなどもないし。
むしろこの部屋は彼女のために用意した部屋なわけで。
ワンピースの裾を握りしめて俯いてる彼女の震えの原因がわからず、歩み寄った。
「どうかした?」
「………っ、こな、ぃで!!」
「?」
………拒否?
触るな、と?
あれ、俺なんかしたっけ。
「………夢、見てるみたい、で。ハイセに触れたら夢、覚めちゃう……っ、の、やだから…。もう少し、この、ままがいいの」
「………」
ヤバいな。
これ。
会わない間に、なんでこんなにかわいくなってんの。
こんなに、女の子だった?
こんなに素直に、気持ちを伝える子だった?
かわいくて。
愛しくて。
嬉し、すぎて。
綻ぶ口元を隠すように手で覆った。
「……ハイセ?」
壁に両腕ついて、明かりを遮れば。
思ったとーりに顔をあげる。
そのまま奪うように、唇を重ねた。
「………ん、はい、せ……っ、ま…、んんッッ」
言葉も吐息も全部飲み込むように、後頭部へと掌を差し入れさらに深く、舌を絡める。
ぐ、と強く抵抗を示す彼女の腕に抗うように、もう片方の腕できつく彼女を抱きしめた。
「……何、なんでッッ」
「夢になんかさせるかよ」
「え」
「ずっとずっと触れたかった。会いたくて、こうやって抱き締めたくて。何度奪いに行こうと思ったと思ってる?何度あんたを……」
「………ハイセ」
夢みてるみたい、なのは俺だって同じだ。
だけど起きたら覚める夢はもういらない。
あんなむなしい想いはもういらない。
現実(いま)だけ。
現実(いま)がいい。