第12章 溺愛執事の恋愛事情
「あの荷物、何?旅行?」
「………ロンドン、に」
「ロンドン?」
「ハイセに会いに、行こうと思ってた………」
え。
俺、に?
「なんで?」
「………なんで、って……」
「だって、英語は?フランス語は?」
「勉強、した」
「………勉強?」
「ちゃんと、話せるよ!あと中国の言葉も!それから……」
全部聞き終わる前に。
無意識に抱き締めてた。
「ハイセ?」
だって。
あんなに勉強、嫌いだったのに。
子供のころからたくさんの国の言葉を聞いて育つから、そこそこの家柄のものは言葉を覚えていくものだ。
小さなころはなんでも吸収するから。
勉強したからと言って、簡単に身に付くものじゃない。
並大抵の、努力では。
「あーもう。今すぐ俺のものにしたい」
「いいよ」
「わかってる?ぐちゃぐちゃにしたいって言ってんの」
「え……、スプラッタは、ちょっとやだ」
「どんな発想それ」
「だって……」
「今すぐ皇のなかに、挿入れたいって、言ってんの」
「━━━━ッッ!!」
小さく耳打ちすれば。
案の定耳まで真っ赤にして突き飛ばされた。
「変態ッッ!!」
「今更今更」
さて、と。
「?ハイセ?」
疑問顔で首を傾げる皇を背中に、玄関前に投げ出された荷物を、手に取る。
そのまま玄関のベルを、押した。
「ハイセってば」
「挨拶」
「ぇ」
「もともとそのつもりできたし」
「挨拶、って」
「お嬢様を、僕に下さい━━━━ってやつ」
「━━━━━━ッッ」
真っ赤になって声にならない声を出す皇を後目に、玄関の扉が開いた。