第12章 溺愛執事の恋愛事情
潤んだ瞳。
上気する頬。
荒い、吐息。
「━━━━俺も、愛してる」
そんな顔されたら。
そんな目、されたら。
ここが外だと忘れそうになる。
家の前だと。
忘れてしまいたくなる。
「ごめんなさい、ごめんなさいハイセ。酷いこといって、ごめんなさい」
顔上げて。
隠さないで。
泣き顔でもいいから、ちゃんと見せて。
皇。
顔を隠そうとする左手を掴んで、今度は両手とも、奪う。
「ハイセ………?」
「本心じゃないことくらい、知ってたよ」
「ぇ」
「何年見てきたと、思ってんの」
「……知って、たの?」
「当たり前」
「なら、なんで………」
あの頃はまだ、皇をさらっていけるほどの力も実力もなくて。
大事にしてくれた恩人の一人娘を不幸にするだけしか、出来なくて。
だから。
………でも。
「だから、迎えに来たって言ったろ」
「ぇ」
「ちゃんと幸せにするから。今度こそ、あんなこと言わせないから」
「………ハイセ」
涙を嫌う、彼女の瞳はさっきから溢れる涙を乱暴に拭き取るせいですでに真っ赤だ。
「俺の前では我慢しなくていいって、言ったろ」
泣きたい時は泣けばいい。
思い切り泣けるために、俺がいるから。
ちゃんと泣ける場所に、なるから。
「すげ、不細工」
「━━━━!?やっぱり性格変わってないじゃない!ハイセ!」
「ても、好きでしょう?」
「━━━━ッッ、ずるぃ」
この顔に、この子は弱い。
真っ赤になって睨むその顔が見たくてやってるのに。