第12章 溺愛執事の恋愛事情

「迎えに来た、皇」
「迎え？」



腕の中へときつく抱き締めて。
頭へと、額へと、キスを送る。
こんなんじゃ足りない。
足りない。
もっと。
もっと触れたい、皇。


少しだけ体を離し、皇の唇を、奪う。



「………ふ…ッッ、ん」



甘い。
皇のキスは、やっぱり甘い。
舌を絡めて、吸い上げて。
大好き皇の味を、貪った。




「………っせ、待って、ストップ！」


我を忘れて貪ったキスは、皇の酸素を根こそぎ奪っていったようで。
肩で息をしながらうらめしそうににらみあげてきた。


変わらない。
その顔。
その目。


「ハイセっ」


嬉しくて。
唇に押し当てられた掌を今度は舌を出して舐め上げる。



「………っ、はい、せ」



引き気味に、右手を離そうとする皇の右腕ごと掴んで、引き寄せる。
離さない。
もう絶対に。
やっと捕まれたんだ。
絶対に離してやらない。



「ハイセ！！やめなさいっ！」
「………」


真っ赤になって体を引く皇を、目を細めて見やる。


「もう執事じゃないから、聞かない」
「………っ」
「ずっとずっと、こうしたかった。触れたかった」
「………変態っ」
「皇に触れたくて、堪らなかった」
「も……っ、手、離してほんと…っ、舌、やぁ…っ」


相変わらずな、甘い声。
煽る、表情。
わかってないな、ほんと。



「もういらない、って」
「ぇ」
「あれ、撤回して。そしたら止める」
「する！！するから…っ！！こんなとこで、やだ……」

「じゃぁ、好き？」
「え」
「まだ、俺が好き？」



「…………っ」



言って、皇。
皇の声で。
言葉で、聞きたいんだ。



「皇」
「━━━━き」
「なに？」
「………好き。ハイセが好き」