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溺愛執事の恋愛事情

第9章 ふたりの境界線


いってらっしゃいませ、なんて笑顔で会釈してる調子のいい執事なんて無視して。
颯爽と校舎をくぐれば。


途端に聞こえたのはキャーキャー騒ぐ黄色い声。


毎朝毎朝、ほんと懲りないわ。



ため息混じりに後ろを振り向くと、人混みの中心にいる人物とバッチリと視線がぶつかった。


しまった……。



そう思った時にはすでに、勝ち誇ったようにいやらしく瞳を細める執事が、いて。
キャーキャー騒ぐ女の子には目もくれず、さっさと車へと乗り込んでしまった。



「…………」



なんで振り向いたんだろ、あたし。
毎度毎度同じ手にひっかかる自分がほとほと嫌になってくる。



ハイセは。
毎朝あたしを見送ったあと、すぐに車には乗り込まない。
あたしが振り返るのを待ってから、むかつくくらいに余裕たっぷりな笑みを残して消えるんだ。
理由なんてひとつしかない。
あたしを嫉妬、させてからかって遊んでる。
ほんとに根性も性格もねじまがってるわ、あの人。







「皇ちゃんっっ」


「ひ、……っめ!?」



靴を履き替えようと足を止めた瞬間に後ろから聞こえた切羽詰まった呼び声に。
思わずたじろぐ。


「な、んで泣いてんの?」
「だってだって昨日、大丈夫だったの?」



あ、ああそっか。
パーティー途中で。


「ごめん姫、挨拶もしないで帰って会長怒ってない?」
「そんなの全然大丈夫です!」


「……そ、そう」


普段温厚な子が声張り上げると、迫力あるわね。
しかも涙のオプション付き。
そりゃぁみんなじろじろ見てくよね。


「怪我してないですか?体調は?」
「平気だよ、大丈夫」
「ほんとに?」
「うん、心配かけてごめん」

「良かったですほんと。さすが、和泉様ですね」


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