第9章 ふたりの境界線
「………朝から戯れ言言ってないで早く準備して頂けますか」
「ざれ……っごと、って」
その口の聞き方、いいの?
執事として。
「出来ないようでしたらお手伝い致しましょうか?」
「は?━━━━っ、きゃあぁぁぁっ」
いきなり今しがた着ていたはずのネグリジェは、一気に腕からスポン、と取り除かれ。
この明るい白昼堂々、産まれたままの姿が晒された。
「なにすんのよっ」
「…………そのような格好でドアを開けたのですか」
「悪い?」
ハイセからネグリジェを奪い、体を隠す。
「悪いに決まってるでしょう。変態ですかお嬢様」
「……それ、あなたにだけは言われたくないセリフね」
「下着も着けずに廊下に出たくせに?」
「急いでたの!」
「別に開ける必要などないでしょう」
「それは…っ、そうなんだけど」
「では何故僕以外の人にドアを開けたんです?」
「だから、それは……っ、あわてててっ」
もぉ、いいじゃんっ
別にっ
「僕以外の人に朝決してドアを開けないで下さいね」
「わ、かったわよ」
「お嬢様」
「何━━━━━ぅ」
ネグリジェを押さえていた右手が呆気なく取られ、そのままそれは、パサリと床へと落ちた。
隠すものがなくなったために白昼堂々再度肌が晒される。
抗議する前に唇までが塞がれて。
朝から深く交わる口付けに、頭が追い付かない。
「熱は、ありませんね」
「は?」
「お顔が、赤かったので」
『まだ昨日の熱が覚めてないのかと』
なんてケロリと言ってのけたのはあたしの専属執事。
「〰️〰️〰️っ、普通に測んなさいよっバカっ」
「すごくいい眺めですが、シャワーどうぞ、お嬢様」
「〰️〰️〰️〰️っ」
恋人の裸見たら、顔色ひとつくらい変えたっていいじゃないっ。
なんなのよいつもどーりのその余裕はっ。
「嫌いっ!!ハイセなんか大っっっ嫌い!!」