第8章 溺愛執事の事情
『そのキャンディ、舐めないで下さいね』
『はぁ?』
『それは、基本つけるものです。……まぁ、舐めてもよろしいですが』
『??』
『聞きたいですか?後悔しないで下さいね』
『………何よ』
『………避妊するときに使うものです』
『……………え?』
『わかりませんか?』
『え、……っと』
『本当に知りたいのでしたら教えますが。……ほんとに聞きたいですか』
『いい!!いい!!わかった!わかったから、しまうから!これ!!』
『それが賢明ですね』
『…………紛らわしいもの、作らないで欲しいわ』
『お嬢様が無知なだけでしょう?大抵ご存知ですよ』
『涼しい顔して公開処刑するのやめてくれる?回りのひとたちの視線が痛すぎる』
『意外と皆さん気にしていませんよ』
『………あんたのその容貌でランジェリーショップの袋は違和感半端ないのよ。なんで今日に限って車ないわけ?』
『お嬢様が歩きたいとおっしゃいましたので』
『…………』
『お呼び致しましょうか』
『………けっこうよ』
━━━━━━………。
「買っといて良かったわね」
「………また、補充しておきます」
「遠慮しとくわ」
「オルゴールの中に大切にしまってらしたので」
「閉まってない。隠してたのよ」
愛しいな。
照れたように視線を外すその仕草。
かわいらしい言い訳も。
なんでこの子はこんなにも一瞬にして心を奪っていくんだろう。
溢れそうな気持ちも。
だけど溢したくはない暖かい気持ちも。
どこにしまって置けばいいのかわからないくらいに。
愛しくて仕方ない。
「では、使わせていただきます」
「………わざわざ、丁寧に断っていただかなくてけっこうよ」
「先ほどまでずいぶんかわいらしくおねだりしていた方とは別人のようですね」
「………っ、ハイセも、さっきまでの優しい紳士とは別人ね」
「優しいでしょう?」
「どこが?」
「━━━━━どちらが、お好みでしょうか」
「………っ」
理性なんか捨てて。
本能のまま、求めて。
羞恥心とか理性とか、根こそぎ奪ってやるから。
だから。
「━━━━━もっと」
「………ぇ」
「もっと、いつもみたいに、めちゃめちゃに、されたい」