第8章 溺愛執事の事情
「え」
一瞬、ハイセの言ってる意味がわからなくて。
キョトン、とハイセへと向けた視線。
だけど決まり悪そうに視線を外すハイセを見て。
瞬間。
ボンって。
音が出たかと錯覚するくらいに顔面に熱が集まった。
待って。
待って待って待って。
待って!!
ハイセが、最後までしなかったのは……。
あたしを嫌い、とかそーゆーわけじゃなくて。
じゃ、なくて。
「……ぷ…っ」
やだ。
どーしよう。
「あは、あはは……っ、嘘でしょ?ハイセが?」
ハイセが、顔赤くして。
動揺してる?
いつも完璧で。
ミスなんてしなくて。
超能力ばりに人の考え読んじゃって。
ほんといつもむかつくくらいに余裕ぶってる、ハイセが。
今目の前で明らかに動揺してる、の?
「━━━━━〰️っ、皇」
やだ。
どーしよう。
写真撮りたい。
ううん、動画撮りたい。
やだ。
かわいいっっ。
「くそ、まじ覚えてろよ」
「何?ハイセ、誰に言ってるの?」
「お前な…」
「『お前』?」
「〰️〰️〰️お嬢様」
「ハイセもちゃんと人間だったんだね」
「は?」
時々ロボットかな、とか本気で疑ったもん。
「………ハイセ」
「なんでございますか、お嬢様」
あぁ口調からして全然違う(笑)。
愛しい。
愛しい。
我慢、してくれたんだね。
愛しくて。
愛しくて。
たったひとり、唯一な、存在。
我慢していてくれたことに。
『あたし』を、誰よりも、自分よりも優先してくれたことに。
嬉しさよりも先に込み上げるもの。
愛しさよりも。
うん。
これは間違いなく、『独占欲』。
そーやっていつもあたしでいっばいにして。
完璧なあなたも。
かわいくて少年みたいなあなたも。
全部あたしだけ。
あたしだけに、その表情(かお)見せて。
ねぇ?
だから。
解放、してあげる。
「あたし、持ってるよ」