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溺愛執事の恋愛事情

第7章 お嬢様の涙


ちゅ、と、啄むように首筋へと唇を寄せるけど。
それだけで彼女の体は堅くなり、力が入ってしまう。


「大丈夫、僕ですお嬢様」


この度に手を握り、優しく視線を合わせた。
そのまま右腕に今度は唇を寄せ、何度も緩く、優しく口付けた。


「大丈夫ですか?」
「へい、き……っ、怖く、ない」


恐怖に瞳が支配されていないことを確認しながら、今度は左手へと唇を寄せる。


「ハイセ……っ、それ……っ」
「まだ怖いですか?」
「ち、がう…っ、それ、くすぐ、ったい……っ」


「………」



恐怖でも、拒絶でもなくて。
恥ずかしそうに頬を染めながら右手の甲を食む彼女に、少しだけ安堵しつつも優しく目を細めた。


「噛むのは禁止です」
「ハイセ……っ」


唾液のついた彼女の右手をやんわりと外し、そのまま指先ごと自分の口に咥え舐めあげた。
ついでに彼女へは、俺の左手を宛がう。


「このくらい、いつもやっているでしょう?」
「そう、だけど……っ」
「これ以上ご自分の体を傷付けるのは禁止です」

「………っ」


「そろそろ次へ進んでもよろしいですか?」
「え」


指先の感覚に気をとられている間に。
後頭部へと掌を差し入れそのままベッドへと押し倒す。


「………っ!?」


「嫌なら、仰ってください」


頭の下に自分の掌を差し入れたまま、真っ直ぐに彼女を見下ろした。
一瞬たじろぐように視線を泳がせてから。
ゆっくりと、視線を合わせてくれる皇。


「……嫌じゃ、ない」


精一杯の、応え。
その表情にも瞳にも、恐怖の色がないことを確認し。


再度その唇を、奪った。

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