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溺愛執事の恋愛事情

第7章 お嬢様の涙


こんなに小さな体で。
あんな痣が残るくらい男たちに押さえつけられて。
何をされたかなんて、想像するまでもない。
どれほど怖かったか。
どれほど、絶望したか。


「………っ」


想像しただけで、噛み締めた口の中から鉄の味が広がる。



「ハイセ……」
「ええ、眠るまでこうしています。安心して下さい」

どす黒い感情には気付かれないよう、優しく、髪を解かすように撫で上げた。


「大丈夫だから、安心して眠ってください、お嬢様」
「ちがうの……」
「ぇ」
「ごめんなさい……ハイセ」


するりと、腕の中からすり抜けると。
彼女は震える手で自分自身の体を抱き締めながらたどたどしく、言葉を紡いだのだ。


「気持ち、悪くて……。ずっと、感覚が、残って、て。吐きそうなくらいに、気持ち悪い、のに。」
「………」
「………熱い、の。からだ……」


「━━━━━え」





「ごめん、なさい……ハイセ、あたし……っ」




「━━━━っ」



思わず、右手で口元を覆った。
まさか。
そんな………。



「………薬、飲まされたんですか?」



だって。
あれは。
あの薬、は、確かに彼女の口に入る前に男の口に放り込んだ。
あれ、以前に……?


「……すみませんお嬢様、キス、してもいいですか?」
「ぇ」


途端に、恐怖に揺れる瞳。
触れただけであんなに怖がっていたんだ。
キス、なんてもっと怖いのは当然だ。
だけど。
彼女は少しの間の、後。
ゆっくりと頷いた。


「大丈夫、お嬢様。見て、ちゃんと僕でしょう?怖くないから、口、開けて?」

啄むようにキスをすれば、やっぱり恐怖に体は堅くなる。
なんとか和らげたくて、優しく声をかけた。
頭を撫でながら、ゆっくりと口を開いた彼女の口内へと舌を侵入させ。
ぎゅーって、両手を握り締める彼女の手を優しく包み込んだ。

「………すみません、よく、頑張りましたね」



優しく髪を撫でながら、さらに沸き上がるのは真っ黒に膨れ上がったどす黒い感情。
これ以上、こんなにも彼女を苦しめるあいつらを、殺してやりたいくらいには。


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