• テキストサイズ

溺愛執事の恋愛事情

第7章 お嬢様の涙





「…………」




湯船で体を暖めて、ベトベトだった体を綺麗に洗い流しベッドへと寝かせ。
そのまま彼女の左手に両手を重ねていれば。
暫くしてから手の内の左手が、ピクリと動いた。
合わせて彼女の寝顔を伺い見れば。
ゆっくりと彼女は、母親譲りのブラウンの瞳を、開いていく。



「………皇?」



ボー、とした、ままに。
声だけを便りに視線をうつす動作をする瞳が、俺を捉え。
瞬間。
その瞳は大きく見開かれて行った。




「ぃやぁああっ、やだっ、いやぁっっ」




パニック状態の彼女の悲鳴は、いくら防音といっても完璧ではない壁から、うっすらとでも通り抜けたようで。

「お嬢様っ!?和泉様、大丈夫ですか?お嬢様っ!?」

ただならない様子にメイドが必死でドアを叩いた。


「大丈夫、心配ない」


パニック状態で暴れる彼女を腕の中へと閉じ込めながらそう、低く言葉にする。
それから。
恐怖で顔を歪める彼女の両腕を取り、視線を合わせた。


「皇、俺だ。大丈夫だから」


虚ろに合わない視線がゆっくりと、焦点を合わせると。
皇は強張っていた力を緩め、俺に全身を、預けた。

「はい、せ」
「ええ、僕です。大丈夫、もう、怖くないですから」
「ハイセ……」
「安心してください。大丈夫」

『大丈夫』。
そう何度も優しく囁いて、抱き締めた背中を何度もポンポン、と叩けば。

「ぅ、わぁああああっっ」


腕の中でしっかりとすがるようにシャツを握りしめながら。
皇は線が切れたように泣きわめいた。
/ 197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp