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溺愛執事の恋愛事情

第1章 神様ヘルプ!


「ハイセっ」

「愛してます、お嬢様」

「……っ、笑ったじゃないさっき」
「人間、嬉しい時は笑うものです」
「いっつも笑ってるじゃん」
「ええ、お嬢様といると退屈しませんから」

退屈だ、とー?

「それ意味違うじゃない」
「違いませんよ」
「違う意味で違うわ、絶対」


抱き締められて肩にハイセの頭が乗っかってるこの状況で腕組みして、難しい顔しか出来ないあたしも絶対、間違ってると思うのだけど。


「そろそろ起きないと遅刻ですね。コーヒー紅茶、いかがいたしますか」

「………コーヒー、苦いの」

「わかりました」


未だくつくつと肩を震わせているハイセをひとにらみ。
笑い出すと、止まらないのよねこの人。


「あ、お嬢様」

ぷくー、と頬を膨らませながらドアへと手をかけた、あたしのすぐ後ろからは、未だ笑いを含んだ声が聞こえる。

「そろそろみんな仕事にくる時間ですよ。お気をつけ下さいね」
「はぁ?」
「そんな格好で男の部屋から出てきたら、誤解されちゃいますよ?」

「……な…っ!」

「まぁ誤解じゃないので俺は構いませんが」

う……っ。
『誤解』じゃないだけに、反論出来ない。
ドアに手をかけたまま、固まることたぶん数秒。
いつの間にかあたしの手の上には、ハイセのそれが重なっていた。


「シャワー浴びていて頂いてけっこうですよ?制服、お持ちしますから」

「…………」

「ご自分でいかれますか?」

「コーヒー早くね!」


PCが置いてあるディスクチェアへと、足を組んで、ついでに腕も組みながら背を向ければ。
やっぱり、な笑い声と、ドアの締まる音だけがやけに響いた。


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