第2章 【9】願いと流星群 後編
丘の下で天が待たせておいたタクシーに乗り込み、私の家へ向かった
「今日からは家の前まで遅らせてもらうから」
「え、でも」
「でもじゃないよ。キミはボクのだから…ちゃんと送る」
「じゃあ…お願いします」
今日は目紛しい1日だったなと窓の外眺めながらしみじみと思った
流星群、すごくきれいだったなぁ……
写真も撮れたし、実家のグループラビチャにでも載せておこうかな
それに…夢にまで見た私の推しが彼氏になった
これが夢落ちだったとしても一生忘れられないだろう
ちらりと天を盗み見てから、自分の頬をこっそりつねったみた
うん、痛い。やっぱり夢じゃないんだ
「まだ夢だと疑ってるの?」
「だって、この前まではライブに行って同じ空気を吸ったのに存在すら疑ったんだよ?これをすぐ飲み込むなんて無理な話だよ」
「じゃあ、何をしたら信じてくれる…?ハグがいい?キスがいい?」
この表情を俗に小悪魔的というのだろう
首を少し傾けて悪魔のささやきをする
もちろん、私の答えは決まっている
「……ハグで」
「いいよ」
まだ私にはキスの要求は早い
照れるどころの話じゃなくて、それをねだる度胸が私にはない