第3章 ○カシスソーダ*芥川龍之介
「只今。」
扉を開け、玄関を見れば人虎の靴がある。
しかし、中から声は聞こえてこない。
…まさか、倒れたりしていないだろうな。
「おい、人虎!」
声を上げながら、自室に入ると
僕のベッドの上に身を投げ出して寝ている人虎がいた。
スースーと寝息を立てながら、安心したように眠っている。
…余計な心配ばかりさせる奴だ。
柔らかな銀髪を撫でると、猫のように僕の手に擦り寄ってくる。
「…それにしても、なんて格好だ。」
横で眠っている人虎の姿といえば、
下着の上に僕のシャツだけを羽織っている。
なんとも無防備な姿だ。
…此奴は、態としているのか?
スラリと伸びる足、横向きに寝ることで強調されている胸元、晒された白い首筋。
全てが僕を煽り、強い劣情を抱かせる。