第1章 鏡でもみてみ?
ダンっと酒が入った缶をテーブルに叩きつける
零れてるし…
「もう、ほんとやだ…私好きだったのに…浮気相手だったなんて…そんな人じゃないって思ってたのに…」
高校からの腐れ縁のこいつ、はどうやら傷心らしい
彼氏だと思っていた相手は実は浮気相手だったと知って俺の家に駆け込んできた
大量のビールを持って
グズグズ泣く、昔っからそうだった
彼氏と別れたら俺のところにやってきて酒に酔って泣きじゃくる
「ほら、しゃんとしろ
お前の天敵の萩原がもうすぐ帰ってくるぞ」
萩原とはとことん仲が悪い
いや、が萩原を毛嫌いしている
萩原が彼女を構いすぎるから、彼女がうんざりしてるって感じだな
「なんで~研ちゃんが陣平の家に帰ってくるのー?」
「言っただろ?あいつのマンションでボヤ騒ぎがあって、消防車が出動して放水されて部屋中びしょ濡れで住めないからしばらく俺ん家に避難してるって」
そんな事言ってたっけ?と惚ける
じゃ、研ちゃん来る前に帰ると立ち上がろうとするのをじっと見ていた
「お前も帰る家なかったんじゃないか?」
ハッと我に帰りまた座り直した
じわっと大きな瞳に涙が溜まる
のアパートは老朽化で取り壊されることになり、新しい家が決まるまで彼氏と思っていたやつの所に世話になっていたらしい
でも、本命が乗り込んできて追い出されたと…
つくづく男運が悪いこいつを不憫に思う
「ただいまー」
タイミングが悪い時に帰ってきやがった…
は萩原に涙を見せるのをとことん嫌がる
後で萩原がからかうから…
はグイッと涙を拭いて、萩原に席を譲った
と、見せかけて俺の背中に隠れた
「ちゃーん、どうしたの?そんな所に隠れてないで一緒に飲もうよ」
酒ならいっぱい買ってきたし、と湊月の頭をナデナデする
「研ちゃん、やっぱりちょっとウザイよ」
また始まった
人の周りでじゃれ合うのは鬱陶しいので辞めていただきたい
萩原が風呂に消えて、ははぁ~とため息をつく
萩原が買ってきた酒もどんどん空けていく