第6章 紫原敦
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紫原が満足したのは
夕飯の時間になってチームメイトが呼びにきてからだった。
ぐったりしていたさやは
ルームサービスを頼んでくれるという紫原の好意に甘え
しばらくの間眠りについた
「紅ちんーおきてー」
「ん…敦…?助けに、きてくれたの…?」
紫原は少し焦った。
たくさん愛した後とはいえ
1人にしてしまったせいでまたあの夢を見たのではないか
そっと頬を撫でると
いつもとは違いふにゃりと溶けるように
笑うさやを見て
長い間同じ夢を見すぎたせいで
反射でそう言っているだけだと思い直し
「さやちん愛してるよー」
「私もよ敦。愛してる」
不安を誤魔化すように
さやが壊れてしまわないように
優しく抱き締めた。
(こんなに長い間あの夢を見させるなんてー
最悪だし
まだ足りないかなー
俺がいるってちゃんとわかってもらわなきゃー)
「じゃあーもう1回しよー?」
「え?」
「まだたーくさんゴムあるからー」
紫原は見せつけるように
新品の箱から繋がったままのゴムを取り出すと
それをベットの頭部分に投げ
またさやへと覆いかぶさった。
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その日の夜中にやっとさやは解放され
紫原の腕の中でゆっくりと
眠りについた
紫原はさやの頭を撫で続けている
眠る間際まで
いまいるのは自分の傍だとさやがわかるように
もうあの恐ろしい夢は見ない
ここにいれば安全
紫原の甘い香りに包まれて
つかの間の幸せを
感じていた。