第6章 紫原敦
「紅ちんー泣かないでー」
紫原はさやの頭を
大きな手でゆっくりと撫でた
俺の腕の中でぽろぽろと泣く紅ちん
ほんと可愛いー
俺がいなくてー辛かったよねー
大丈夫ー俺が紅ちんを悪夢からも
…あいつからも守ってあげるからー
「敦…いつまでそうしてるつもりだ」
呆れ顔の陽泉監督荒木雅子が
いつまでもさやを抱き締めている紫原へ声をかけた。
他の部員は興味深々でその様子を見守っている。
「雅子ちーん俺今日紅ちんと一緒にいるからー
荷物よろしくねー」
「仕方ない…そういう話だったからな
福井、荷物を運んでやれ」
「俺ですか!?」
ぶつぶつもんくを言う福井と紫原はお菓子の袋と
肩にかけているスポーツバックを交換した。
監督の荒木はまたなと声をかけ
選手を引き連れて行った。
「どこいくー?」
紫原はさやの手を取り歩き出した。
足の長い紫原はずんずんと先に行ってしまう
さやは少し駆け足でついて行く。
紫原はさやが遅れているのを見ると
さっと抱き上げた。
所謂お姫様だっこだ。
「紅ちんおそーい」
「敦が早いのよ。降ろして
ゆっくり歩いて貰えれば問題ないわ」
「だめーこっちのが紅ちんと近いからー
このままでいくー」
さやはやれやれとばかりに諦め
紫原に寄りかかった。
安心を求めていたのは一緒
寂しくて少しでも距離を詰めたいのも一緒
ふと微笑むさやが目に入った。
愛おしさに胸が潰されそうになる。
「あーだめーちゅーしていいー?」
紫原はそう言うと片腕の上にさやを乗せ
優しくキスを落とした。
「んっ…もう敦ってば」
「だってー紅ちんが可愛すぎるのがいけないんだよー」