第9章 日向順平
先程までは火神達がいたせいか
そんな風に思えなかったが
二人きりで電車に乗って手なんか繋いでいると
周りの目も…
「あの子すっげー美人!」
「確かに!高嶺の花って感じだけど」
「でも隣の男なんか釣り合ってなくね?」
「あー、お情けで一緒にいさせてもらってんだよきっと」
ひそひそと聞こえる声に日向はピキッと青筋がはしる
さやはよく聞こえていなかったのか
日向を見つめ妖艶な笑みで微笑んでいる
「(うるせぇな…
俺だって釣り合ってねぇのはわかってんだよ
でもコイツだって俺の事…あれ聞いた事ねぇな)」
---- 次は〇✕駅ー。
「あ、この駅です
遠くまでありがとうございます」
「さや…」
「んっ…」
車内にいる男達に見せつけるようにキスをする
俺、こんなんばっかだな
そう思いつつもキスが止められない
扉が開いて呆然とする車内を後にして
戸惑うさやを目の前にして
それでもまたキスを落とした
流れていく電車がゆっくりと走り抜け
さやの熱を
甘い香りをただ感じて
「ん…んんっ…はっ」
「はっ…さや…ん」
漏れる声が余計に欲情させる
そっと背中に回される手が好きで
何も知らない、まだ数回しか会ったこともない
コイツを愛おしく思う
触れた唇がゆっくりと離れ
さやの顔がよく見えるようになる
少し照れて淡く染った頬、妖艶に笑う顔
(ああ…好きだ
例え独り占めできなくても
好きださやが。好きでたまらねぇ)
「さや…」
「はい。なんですか順平さん」
「お、俺っ…お前が…!」
もういっその事言ってしまおうと
ヘタレな自分に鞭をうち、言葉を繋ぐ
さやは少し驚いたように目を見開き
妖しく笑うとそっと日向の唇に人差し指をつけた