第9章 日向順平
日向に抱きかかえられ
気絶したままお化け屋敷を後にしたさや
火神は走り抜けてきたのか
かなり息を切らし膝に手をついている
黒子と緑間はさやの様子をおろおろとしながら
見つめているが
さやは綺麗な顔で気絶したまま
動く気配がない
「か、火神っぶっは!ぎゃぁぁって!
まじうけるわそれ!くっくっく」
「わ、笑うんじゃねぇ!
叫び声ならさやもあげてただろうが!」
「さやちゃ、ん!ぶははは!
あのクールな女王様がっ!!ふははっ!」
大爆笑で地面を転げ回る高尾
火神は高尾を睨みつけるが全く気にしない高尾に
イライラが募る
高尾がひーひー言いながら腹をおさえていると
ぬっと小さい影が高尾を遮った
「和成…随分楽しそうね?」
「あら…?お早い復帰で…」
「ふふふ…」
さっきまで確かに日向に抱かれていた筈なのに
一体いつから起きていたのか
高尾はまたしてもさやの黒い笑みを前にして
震えが止まらず地面に正座した
「私の事も楽しませてね」
さやはそう言って黒い笑みを深くすると
高尾を引き摺り歩き出した
*
あれから高尾を1人だけ
お化け屋敷に再突入させたさやは
係員に色仕掛けで高尾を徹底的に脅かして貰い
半泣きの高尾を全員で盛大に笑った後
また遊園地を楽しみ、遊園地で皆とわかれ
日向に次の最寄り駅まで送って貰うことになった
遊園地の最寄り駅まで着き
2人で並んで電車の座席に座った
満員とはいかないが
遊園地帰りの人達でそれなりに混んでいた
「今日は楽しかったです
ありがとうございました」
「いや火神に言ってやれよ
チケットくれたのアイツだしな…」
「順平さんがいたから楽しかったんです」
にこりと笑うさやに顔を赤くする日向
電車の中だと言うのに
抱き締めてしまいそうな日向は
繋いでいた手をぎゅっと握りしめた
(なんかこうしてると…
カップルみたいだな…)