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リンゴ

第8章 誠凛vs秀徳







そんな事言われ初め


皆、私がキャプテンでもないのに




『さやがそう言うならそうだよ』


『じゃあキャプテンはさやより
点を多くとれるんですか?取れないですよね?』


『さや様』


『さや様』


『さや様』



『『『仰せのままに』』』




歪な女帝崇拝


私は戸惑い、悲しみ
それでも言えなかった


盲信的な女バス部員たちが

月バスに取り上げられ
変わってしまった世間の目が




『もう、やめて
こんなの私じゃない…ほら、私はこう笑うんだよ…!』


『は?やめてはこっちだよ
今更あなたのそんな笑い方誰も求めてない』




『……そう。わかったわ
私にひれ伏しなさい。全て私のものよ。』



もう止められない

"女帝"紅林さやは始まってしまった













それから妖しく笑う事が癖になった

それでしか笑えなくなった。



黄瀬達の前では
女帝ではなくさやで居られたから

前のように笑う事もあった


それ以外ではどうしても出来なかったのに




(確かに今日私は皆と笑っていた…)



それがいい事なのか

悪い事なのか、わからない



今は男子バスケ部無名の紅林さやだから…



少しくらい…

と思ってしまうのは、私の覚悟が足りないのか





「…さやっち?」



はっとして黄瀬の方を見ると
心配そうな顔をした黄瀬が顔を覗き込んでいた

周りはもう静かな住宅街を抜けて

駅前の騒がしさが辺りを満たしていた。



「大丈夫っすか?
なんか考え込んでたっすけど」


「…ええ。大丈夫よ
……涼太、私が好き?」


「っちょ、いきなりっすね!
もちろん大好きっす!愛してるっすよ」



凄く暑いはずなのに
体は寒くて、心が凍っていく気がして


涼太の好きを求めた


愛おしいこの歪で狂ったこの関係が
間違っているとわかりつつ


黄瀬の優しく抱き締める腕の中で
さやはひどく安心した






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