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偽物女優【恋プロ長編◆裏】

第2章 身代わり


「律花さんとなにを話していたの?」

車を運転しながら、ケイトが問う。


「今度公開の映画を見に来てほしいって言ったよ」

ちくりと罪悪感が棘となる。

わずかに翳ったおもてを隠すように、瞳を伏せた。


「密花………?」

名前を呼ばれ、『なんでもない』と微笑ってみせる。


(いけない。今の私は『密花』なんだから)

深く息を吸い、ざわめく心を鎮めようとする。

けれど黒く塗りつぶしたように、消えない胸騒ぎ。


(どうあれ二時間後には元の生活に戻れるよ。

だからそれまで、あの子を演じれば………。)



TV局の前で停った車。



「行こう、ケイト」

『密花』として微笑い、中へと消えていく。

その後ろ背を追いかける視線に、彼女は気づいていなかった。




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