第3章 救出 *
「驚いたな、あの薬を呑んでも声が出せるなんて」
二人の男に手首を押さえつけられ、さらに服を引き裂かれる。
あらわになった胸元を、男の舌が、唇が這いまわる。
蛭に吸いつかれているようなおぞましさのなか
わずかに心地良さが入り交じり
相反するふたつの感覚が彼女を苛んだ。
「厭っ………! やめて………!!」
「大人しくしないともっと強い媚薬を呑ませますよ」
その言葉に身体が凍る。
じわりとその両目に涙が浮かんだ。
静かになった彼女に暗い笑みを浮かべ、その唇が降ってくる―――。
かのように思われたが。
ドサッ。突然、男達が倒れていく。
ひとり、また一人と。
「律花ッ………!!」
ドアを蹴破り、幼なじみが姿を見せた。
それと同時に、彼のものでないいくつもの靴の音をとらえる。
「ハク………?
それにゼンにキラ、シモンまで………どうして…………。」
その問いには答えず抱きしめられて。
「遅くなってごめん………怖かったよね」
陽だまりの匂いのする金色の髪。
頭上から降ってくる声に、キラに包み込まれてるのだと気づく。
「キラ。気持ちはわかるが、そいつを離してやれ」
ハクの声に、パッと腕が外される。
「あっ………ごめん! キミが無事なんだって思ったらつい、」
「ううん。助けてくれて、ありが、と………う」
緊張の糸が切れ、ぐらりとふらついた身体。
眠ってしまった彼女の膝裏をさっと掬う。
「行こう。こんな処にいられないでしょ」
靴の音を忍ばせ、荒れ果てた病院を後にした。