第3章 救出 *
「ん…………。」
ひんやりとした空気を感じ、律花はゆっくりと瞼を開いた。
ひどく物哀しげで、周囲には濃い錆の匂いが立ち込めている。
(どうして私はここにいるの………?)
軋む頭に手をあてながら起き上がって、記憶の箱を探る。
(密花からのメールを読んで、それで………、)
あの後なにが遭って、どうして此処にいるのか。
それだけが思い出せなくて、ため息をついた時。
コツ、コツ・・・といくつもの靴の音をとらえて、彼女はふり返り
そこで初めて、ここが廃墟の病院なのだと気づいた。
「起きたのか。………まぁでも、」
『そのほうがずっと楽しめそうだ』―――見知らぬ男は野卑な笑みを浮かべ
舐めるように律花の身体を見分した。
「っ…………。」
自分の身体を抱きしめるように腕をかけ、ふいと彼らから視線を外した。
「そんなに怯えることはないだろ? ただお互い楽しもうってだけだ」
錠剤を含んだ一人が、律花の髪をつかんで上向かせ―――。
「っ…………!?」
唇を重ねた。
口内に入ってきた錠剤。反射的に、こくりと喉を上下させる。
「な………なにを呑ませたの」
ビリビリと服を裂かれ、恐怖が胸を塗りつぶした。
「やっ………厭あぁっ!!」
視界が霞み、身体の奥から熱が宿るような心地を覚えた。
抗いたいのに、力が入らない。
むしろそう願うほど、身体の力が抜け落ちる感覚。