第7章 円鑿方枘
『そこをなんとか…』
女性はそれでも引き下がらない。
『私達は任務遂行の為に先を急ぐ身です。お答えしたい所はありますが…先程のお話でご勘弁頂けませんか?』
いつものヘラヘラとした感じではなく、有無を言わせない感じで言った衣月。
女性は諦めて
『ご無理を言ってすいませんでした…』
と言って去っていった。
里白がトイレから出てきた。
『なにかあったんですか?』
里白はどこか怒ったような衣月に不思議そうに言った。
『別に…いつもの三蔵法師だから〜ってやつ。ほんっとにめんどくせぇっつうの!』
『あーいつものあれですか…』
里白が苦笑いしながら言った。
『そういうことー』
衣月はいつものヘラヘラとした状態に戻っていた。
『あの…これ…一応は洗ったんですけど…』
里白が申し訳ないという感じで先程の法衣を衣月に見せた。
『いいよ?それ…里白にあげる。』
『だってこれ…前に…こう…『いいの。それは里白が持ってて?お願い。』分かりました。』
衣月はまっすぐな目で里白を見て言った。
衣月…いつまで隠すんですか?
この法衣はあなたの実の父である光明三蔵から貰った物ではないんですか?
そんな大切な物を私に預けていいんですか?
里白は法衣を見ながら複雑な気持ちになった。