第7章 円鑿方枘
里白と悟浄は部屋に戻ろうと歩き出した。
『あ……』
『ん?どしたの?』
『いえ…なんでもないです…』
里白はそう言って後ろを洗濯物した物が入った籠で押さえた。
『月にくる例のアレか?』
『え…あ…はい……この前きたのに…生理不順だからたまに月に2回きたりとかするんです…』
『そっか……とりあえず部屋に戻ろうぜ?』
『はい…』
『ただいまです…あの…衣月…来ちゃいました…法衣が…』
里白は部屋に着くなりそう言って落ち込んでいる。
『あーそういうことね。別にいいよ。』
衣月はそう言うと荷物の中から法衣をもう1つ取り出した。
『ほら、着替えてきな。』
衣月が里白に渡したのは里白の荷物と白い法衣。
『え?これ…普段着てるやつじゃ…』
『そうだけどしょうがないでしょ?ここじゃそれ着るしかないし…』
『確かに…すいません…』
『いいの!早く着替えてきな。もうすぐご飯だってよ。』
衣月は里白を備えつけのトイレに押し込んだ。
ーコンコンー
『あの…宿屋の者ですが…』
外からノックの後に女性の声が聞こえた。
『空いてますよ。』
衣月はそう答えた。
『失礼します。やはり…三蔵法師様ですよね?もし、よろしければ…説法の1つや2つ…ご教授願いたいのですが…』
女性は入ってくるなり、衣月と三蔵の姿を見て言った。
『申し訳ございません…私たちには教えることはございません…ただ、一つ言えるのは…一人一人が自分らしく生きるのが大切だと思います。それが破天荒だと言われようとも…それくらいですかね。人様に教えることなんて何一つ持っていませんよ?』
衣月はそう言って微笑んだ。
三蔵はその衣月の微笑みがとても懐かしく思えた。