第6章 直情径行
しばらくそうしていた三蔵と衣月。
『ねぇ、三蔵…確かにさ…光明さまを失ったことは三蔵にとって辛かったことだとは思う。でも、それってさ…意味があった事だと思う。その死別がなければ今の三蔵もいないし、あたしも三蔵と出会うこともなかったと思う。だから…今は無理でも乗り越えていこう?弱いところをいくらでも見せていいんだよ?それを全て…あたしが受け止めて愛すから。あたしはどんな三蔵でも受け入れる自信はあるよ?』
衣月はそう言って兎のような目になった三蔵にキスをした。
それに答えるように三蔵も衣月にキスをした。
それに安心したかのように三蔵が先に眠りにつき、衣月も眠りについた。
翌朝…
『おはよう…三蔵。』
『あぁ…衣月…』
『なに?』
『昨日はすまなかった…』
『いいの。気にしなくていいよ。どうせ、初めてだからって思ってるんでしょ?そんなのいいの。あたしはどんな形でも三蔵が抱いてくれたことが幸せなの。このまま…抱かれないで終わるのかなって思ってたから…ほらほら、シャワー浴びといで!』
衣月はそう言って三蔵を備え付けのシャワールームに押し込んだ。
『はぁ…まったく…あんな可愛い顔みせられたら…こっちが興奮してきちゃうじゃん…』
普段見ることの出来ない三蔵が本当に落ち込んだ顔を見た衣月は顔が熱くなった。
多分…今の顔を鏡に映したら確実に顔が紅いだろうと思うとすごく恥ずかしくなった衣月であった。
金山寺を出る前に光明に言われたのだ。
〖飛仙…いえ、衣月。私になにかあった時は江流を頼みましたよ?あぁやって突っ張ってますが、本当は泣き虫で臆病な子なんです。〗
それが衣月が最後に聞いた光明の言葉だった。
その数ヶ月後…衣月が第二十代目紅亜煌玄三蔵法師として有天経文を受け継いだ。
その数日後…光明の悲報と江流が第三十一代目唐亜玄奘三蔵法師として、聖天、魔天の両経文を引き継ぐ形になり、聖天経文は光明を襲った妖怪に奪われたことを知った。