第22章 約束
遡ること、数ヶ月くらい前……
旅を終えて慶雲院に帰ってきた3日後。
衣月は僧侶たちに呼び出されていた。
『なんの用?』
寝起きで機嫌の悪い衣月は不機嫌そうに言った。
『煌玄さまには…1年か2年後に即身仏となっていただきます。』
『はっ??意味わかんないんだけどっ!!』
僧侶の言葉に衣月は混乱した。
『先代は貴女さまが居たので、拒否なされたそうです。しかし、煌玄さまはお弟子さんなどいらっしゃいません。拒否される理由はないはず。そもそも…有天経文の守り人は生きてそこに存在する…すなわち、即身仏となり、人々を守る存在としていくのが習わし。ご安心ください。経文の次の継承者は煌玄さま亡き後にしっかりと決めさせて頂きます。』
僧侶は淡々と答えた。
衣月も代々の有天経文の守り人の末路は知っていた。
代々の守り人は愛する人の為に生きる事を周りから反対され、即身仏となることで生きている即身仏になる為の修行が始まるまで、愛する人と生きる時間を貰っていたという…
『私たちが…貴女さまと玄奘殿との関係を知らぬとでも?有天経文の守り人は代々…女…その不浄な存在を私たちが引き受けたのです。なんなら…理由をつけてアナタを追い出してもいいのですよ?』
という脅し文句まで言われた。
理由つけて追い出す…その意味は分かっていた。
要は本来は殺生は禁じられているが、慰み物として扱った後に自殺と見せかけて毒殺するという…
密かに色んな寺院で行われてきたこと。