第19章 一樹之陰
みんな…帰ってこなかった。
衣月は金蝉達の末路を聞いて下界に続くゲートの前に遺されていた金蝉の履物を大事そうに抱えて…泣く日々が続いていた。
罪を犯した天界人は下界に人間として転生させられる。
それが何年かかるかはその罪の重さにもよる。
おそらく、500年後だろう。
そんな衣月を見兼ねた観世音菩薩は衣月に言った。
『お前も転生するか?そうすれば、記憶は忘れることになるが、転生した金蝉とまた会えるぞ?』
『やだ…だって…忘れるのなんか嫌だよっ!!それに…金蝉と同じ魂だとしても金蝉じゃないっ!!出てってよっ!!もう、なんでみんなして忘れろ忘れろって!!里白まで忘れて転生しようって言うしっ!!意味わかんないよっ!!なんで?なんで?あたしが何かしたっ!!なんで…こんな目にあわないといけないのっ!!菩薩も皆…皆…大嫌いっ!!!』
衣月は喚き散らした。
完全に八つ当たり。
そんな衣月を菩薩は優しく抱きしめた。
『すまん…俺もなんとかできるように動いてはいたが…間に合わなかった…俺の責任でもある…責めたいなら俺を責めろ…嫌いになってくれたって構わない。でもな?衣月…いつまでも後ろ向いてたって意味が無い。前を向いて進むことも大切だ。他の2人は亡骸は見つかった。見つからなかったのは金蝉だけだ。それで更にお前は金蝉が居なくなったことが受け入れることが出来ないんだろう?でもな?認めないといけないんだ…分かるな?』
観世音菩薩は優しく諭すように言った。
『うん…ごめんなさい…』
外に聞こえるんじゃないかと思うほどの大きな声で子供のように衣月は泣いた。
次の日…