第2章 背負った過去
衣月は街の薬局でお目当ての物を買った。
三蔵法師の法衣ではない自分…
こんな姿を見ても三蔵はいつものまま。
そういう経験がなくたって男ばかりの寺院にいたのだから男が何に惹かれるのか分かっているつもりだった。
『あたしって魅力ないのかなぁ…』
下ネタをよく言うのがダメだって言うなら控えた方がいいのだろうか…
色んなことを考えながら宿屋に戻る為に歩いた。
悟浄&里白
『……』
『……』
『あのさ…』
『はい?どうしました?』
里白は読んでいた本から悟浄に目を移した。
『体調不良なんだろ…例のアレで』
悟浄は遠慮がちにそう言った。
『悟浄なら知っているだろうなと思いました。八戒も気づいてたんでしょうね…ダメなんですよ…この期間だけは…』
里白はパタンと本を閉じて悲しそうに言った。
『俺で良けりゃ話聞くぜ?』
『いつか話さないといけないでしょうからね…』
里白は過去の話を悟浄にした。
『俺もさ…母親に愛されなかった……血の色だけが赤じゃねえだろ?自信…持てよ。な?里白…』
悟浄はそう言ってニッコリ微笑んで里白の頭を撫でた。
その大きな手が心地よくて…髪の毛がグチャグチャになるのはどうでも良かった…
なんだかこの手を知っているような気がした。
悟浄も里白に昔…こうしたことがあるような気がしていた。
悟浄は里白へのこの感情を知っていた。
確実に里白を女性として見ていることに。
今まで女は飽きるほど抱いてきた。
会ったばかりの女を何度も抱いた。
里白だけはそうはしたくないと思っている自分がいた。
大切にしたい傷つけたくないという想いがあった。