第1章 鈍感監視者さんと狛枝くん【狛枝凪斗】
「…………」
「…………」
私達の間に沈黙が広がり、改めてどうしようか考えながら手元にあるおでかけチケットを見つめる。
再三言うようだけど、私とおでかけしたところで希望のカケラは集まらない。それでは狛枝くんの為にはならないし、この修学旅行––––新世界プログラムを実行した意味がなくなる。
そもそもどうして、狛枝くんは私とおでかけしたいのだろうか。それを聞く為に顔を上げると、ふと狛枝くんが不安そうに眉を下げているのが分かった。
「ど、どうしたのですか……?」
「……さんは、ボクとおでかけするのは嫌?……いやそうだよね。ボクみたいな人間とおでかけしたい人なんている訳」
「その言葉、斬らせてもらいます!」
「!?」
狛枝くんの自虐がエスカレートする前に言葉を斬らせてもらう。
私は最初に言った筈だ。狛枝くんとおでかけするのは
「決して嫌ではないと、私は言いましたよ?」
「でも、さんは悩んでたから……」
「な、悩んでいたのは確かですけど、それは狛枝くんが言ったような事ではなく……えっと、どうして狛枝くんは私とおでかけしたいのですか?」
「えっ!?」
私の質問に、狛枝くんは頰を赤らめ明らかに挙動不審になった。……もしかして、言いづらい事なのだろうか。
「……言わなきゃ駄目?」
「い、いえ。言いづらい事なら、無理にとは言いませんが」
「…………」
私の受け答えに狛枝くんは一瞬沈黙した後、キョロキョロと周りを見渡し始める。その謎の行動に首を傾げていると、すっと近づいてきた狛枝くんが私の耳元に顔を寄せそっと囁いた。
「あの白黒の、よく分からないぬいぐるみを撃退する希望あふれるキミの姿に、一目惚れしたんだ。……それが答え」
「……"ひとめぼれ"って何ですか?」
「…………………えっ」