第3章 恋のキューピッドはノート様!?【狛枝凪斗】
その一言でドクリと心臓が大きく脈打ち、裾を掴んでいる手が汗ばんでいくのが分かった。でもそれを無視して、今度は力強く握る。
唇が震える。口の中が乾く。それを唾を飲み込む事で喉を潤す。そして––––
「……その好きな人も、キスしたいと思った人も、狛枝くんだと言ったら、どう思いますか……?」
「っ!?」
勇気を出して言った瞬間、狛枝くんの身体が大きく揺れたのが、裾を掴んでいる手から伝わってきた。その様子を肌で感じて、より一層実感する。……告白とはまた違うけど、それに近い事を言ってしまったのだと。
「っ……」
今更ながらどんな返事が返ってくるのか怖くなる。でも、どう思おうが言った言葉をなかった事には出来なくて。
目をギュッと閉じて待っていると、不意に裾を掴んでいた手を優しく離され、そのまま力強く握られた。いっそ痛いくらいに握られた事に驚き、反射的に目を開けると、もう片方の手で優しく頰を包まれそっと顔を上げさせられる。そのおかげで見えるようになった、狛枝くんの顔。
「あ……」
その顔は、まるで熟れたりんごのように赤く染まり、瞳は涙で濡れていた。そんな中、彼は一言呟く。
「……やっぱり、ボクはツイてるなぁ」
口癖であるその言葉は、今までのような淡々とした言い方ではなく、感極まった言い方だった。