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【文豪ストレイドッグス】中原中也短編集

第6章 タピオカミルクティ 【for 春鹿様】


タピオカ。
トウダイグサ科のキャッサバの根茎から製造したデンプンのこと。

芥川の眼前でタピオカミルクティをチラつかせながら、は携帯端末で検索した情報を読み上げる。の左手ごと叩き落そうとする黒獣を巧みに避けては、ミルクティの中で揺蕩う物体をヒラヒラと見せつけた。

「伯国や阿州の主食ですね」

「丁度善いじゃねェか。どうせ昼も食ってねェんだろ」

飲んでみろと指図され、ワナワナと震えながら怒髪天を衝く芥川の眼前に、まるで葵の紋所でも誇示するかのように、は其れを押し付けた。致し方無しと嫌そうに受け取る芥川に、中也は笑い、は苦笑する。

「美味しいよ?」

の口添えも虚しく、芥川は親の仇かと思しき視線で、プラスチック容器を握りしめた。ペキペキと音を立てて、容器が壊れるかと不安になる程の圧力を与えながら、芥川はストローにかぶりつく。

甘ったるいミルクティにまみれて、口内に飛び込んでくる謎のデンプンを舌先に感じ、びくりと肩を震わせた。ぬめぬめと滑るその塊を咀嚼すると、噛みごたえのあるモチモチとした団子の食感に、意外さを覚える。想像していた不快感とは違うものに行き当たり、はてと、芥川はを見た。
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