第1章 星祭 【七夕企画 心の重力番外編】
色とりどりの提灯が吊るされ、足元を灯篭が照らす。まるで夢の世界のような輝かしさに、は両手で口元を隠した。敷地の入り口から敷かれた石畳を踏み、お屋敷のような建物の中でも、上階の奥座敷に通される。星明かりを楽しむために落とされた照明の中、蝋燭の微かな揺らぎが二人の影を映す。
「残念ながら、曇りですね」
豪華な食事もそこそこに、は縁側の手摺にもたれて、空を見上げた。星ひとつ見えない夜空ではあるが、目下に広がる庭園の明かりと、室内の行灯の光が、幻想的に煌めいている。仄かな灯りに照らされるを後ろから抱きしめて、中也は目線をあわせた。織姫と彦星が会えるといいと笑うに、中也はそもそも何故二人は年に一度しか会えないのかと疑問を口にする。
「結婚してから遊んでばかりで働かなくなった二人に、天帝が怒って、引き離したそうですよ」
驚くほど自業自得な様に、中也は呆れて笑った。
ゆっくりと動く雲の隙間から、月明かりが漏れ出す。朧月ですねと指差すの首筋に顔を埋めた。
「あぁ、綺麗だな」
月を見もせずに、中也はを抱く両手に力を込めた。
That's all.