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【文豪ストレイドッグス】中原中也短編集

第1章 星祭 【七夕企画 心の重力番外編】


7月7日。

七夕だからと云って、特別な何かがある訳ではない。装飾が笹になっていたり、首領が短冊を手にエリス嬢を追いかけたり、樋口が天気予報を気にして両手を組みながら晴れるように空を見上げているくらいだ。何時もと特に何が変わる訳でもない。

朝は会議、昼は報告書の確認、夜は会合。中也の予定も日常そのものだ。夕刻になるに連れて空を見上げる者が増えるが、残念ながら今日の天気は曇りだ。片付けた報告書を書庫に仕舞うよう、部下に指示して、中也は正面口に向かう。日も落ちた暗がりの中、会合の時刻まで一刻。少々早いが向かうかと煙草を咥えた時、正面口に樋口の車が乗り付ける。

丁度いい所に、と首領も居合わせて横に並んだ。

「会合とは云ったけれども、今日は慰労会だよ」

中也の肩をひとつ叩いて、人差し指を口元に立てる首領に背を押されて、中也は後部座席を開ける。既に乗り合わせていた女の顔を認識すると、中也はマタタビを嗅いだ猫のような表情を浮かべた。助手席で護衛を頼まれていた銀が、見てしまったと顔を赤らめて目を逸らす。樋口が鼻息荒く、今日のお店はとても佳い所ですからと、車を発進させた。
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