第4章 太宰のくるみ割り人形
Tempo di Valse
中也との名前の付かない関係が、続いた。
初めは、太宰のように女性関係が乱れており、物珍しさから手を出されたかと思っていたが、どうも様子が違う。多忙の最中にの様子を見にきては、まるで壊物でも扱うように触れる。勘違いしてはいけないと自制しなければならない程に、太宰に秘密の関係は進行していた。
「ねえ」
いつも通り、荷物と外套を投げて渡す太宰が、珍しく言葉を切った。荷物と外套で両手が塞がった侭、は何事かと視線を上げると、気味が悪くなる程ににっこりと微笑む太宰と目が合う。
「綺麗になったね」
突然何を云い出すのかと身構えるに手を伸ばし、太宰はの顎を掴んで持ち上げた。そして、とても愉快だと笑う。
「矢っ張り、君を引き入れて正解だった。一石三鳥だよ」
仕事は捗るし、件の異能力者は巧く操れそうだし、と好い事尽くめの事例を挙げて連ねた。其の異様な様に、は怯えて肩を震わせる。
「中也がこんなに大切にするようになってしまった今のを蹂躙したら、彼奴はどんな面白い顔をするかな」
目を弓なりにして笑う太宰が、の唇を喰んで、舌を絡め取った。
That's all.