第2章 その日の記憶
人類が巨人に支配されていた恐怖と屈辱を思い出したその日。
そんな運命の瞬間が来るなんてまだ知らないティアナは、窓辺に座りただぼーっと外を眺めていた。
父は仕事でいなくて、ティアナは学校が半日で終わり特にすることもなく、母と家でのんびり過ごしていた。
「ティアナ、今暇してる?」
「うん、してる」
そんなティアナに微笑む母。
視線からは慈しみと愛しさが溢れんばかりで、この家の娘が愛されていることを物語っていた。
「いい天気だし、外で遊んで来たら?」
「いいの!」
椅子から飛び降りてぱぁっときらきらした笑顔になるティアナ。母はそんなティアナの様子を分かっていたように、
「ティアナもそろそろじっとしてられない頃でしょ」
といった。
ティアナは活発な子で、外遊びが大好きな女の子だった。
じっと椅子に座ってるのは退屈で仕方がなかったのだろう、すでに玄関へ走って行っていた。
「気を付けてね、ティアナ」
「はーい」
「日が暮れる前には帰るのよ」
「もぅ、分かってるよお母さん」
「ティアナのことが心配なの」
母の心配も早く外へ行きたい娘にはどこ吹く風だ。
「ポシェットは持ってるわね」
「うん。お母さんは心配性だね。大丈夫だよ」
ポシェットには怪我をした時のための簡単な薬などが入っている。
ティアナは安心させるように笑うと、行ってきまーす!と言って元気に駆けていった。