第13章 悲しみと、不甲斐なさと
・*・
「ティアナ…」
そろそろ寝た方がいい…とリヴァイは続けようとしたが、それより先に
ティアナがすでに寝ていることに気が付く。
リヴァイはティアナをそっとベッドに寝かせながら、すっきりとした
穏やかな寝顔を見て安心した。
食事を持ってきたとき、ティアナの目に感情が見えなかった時は
流石に焦った。
せっかく人に心を開けるようになってきたというのに。
しかしティアナが味わったであろう絶望は、リヴァイ自身も
感じたことがあるものだったから。
少しでも気が楽になってくれればいいと思う。
――先日の壁外調査で、リヴァイは自分がどれだけティアナを
大切に思っているか改めて思い知らされた。
兵士長という立場上今回のように毎回駆け付けられるとは
限らないし、だからといってティアナが優秀な兵士である以上は
前線から遠ざけるわけにもいかない。
――さっきティアナから抱きしめてほしいなんて言われた時は
本当にどうしようかと思った。
あぁもこちらを信頼している様子、無防備な様子をされると
期待してもいいか?なんて思ってしまう。
上司としての信頼以外はないと分かっていても。
いっそ拒絶してくれれば、とも考えるがそれはそれで嫌だ。
それなら生殺しみたいな状態の方がマシだろう。
…否、それはさすがにないが。
――なんて考えても仕方ないことばかりが頭に浮かんでは消えて、
きっと疲れているんだろうと思う。
このままティアナの傍にいたらもっと思考に嵌りそうな気がして
椅子から立ち上がり医務室を後にする。
…ティアナの額に甘い口付けを落として。