第13章 悲しみと、不甲斐なさと
再びティアナの意識が浮上した。
目を開けて視界に入った天井は、記憶にはないけれど同じような
ものを知っている。
少し視線を動かして辺りを見ると窓からは見慣れた景色が広がって
いて、ティアナが兵舎に帰ってきたことがわかった。
また棚の中身やベッドの数からして、ティアナがいるところは
おそらく医務室だろうとも理解する。
ゆっくりと体を起こせば少し怠いものの痛いところなどはなく、
順調に回復していた。
もう外は完全な夜だったが、壁外での最後の記憶はまだ日が沈んで
いなかったため、完全な時間把握は望めそうにない。
そうして状況確認をしつつ、ティアナはまだぼんやりとしていた
意識を覚醒させた。
…鮮明に思い出す、デリオとイーゴンが命を散らした瞬間。
それは母が食われた時と同じくらいの鋭さをもって、ティアナの
心を切り裂く。
あの時とは違って巨人に対抗する力を、技術を、確かに
もっていたのに。
後少しでも早く伝達から戻っていれば。
後悔しても二人は戻ってこない。
あの幼き日に巨人を殲滅すると誓って、調査兵として過ごすうちに
もう二度と自分の前で人を死なせないと誓って。
未だどちらの誓いも果たせていない。
それらの事実から目を背けるように、母が殺されたあの日と同じく
自分の心を守るため、その心が閉ざされていく…
「…ティアナ。起きたんだな」
完全に閉じてしまう前、そんな言葉とともにリヴァイが現れた。