第4章 おかえし『キミのとなりで ずっと』より
そう分かっていても、なかなか気持ちを切り替えられないでいたら、智の眉毛が悲しそうに下がってしまった。
「いや、ごめん…せっかく作ってくれたのにごめんな」
智にそんな顔させたいわけじゃないから慌てて謝る。
「でも俺が先に約束したのにって思っちゃったんだよ」
それでもつい愚痴ってしまったら
「え?もしかして拗ねてるの?」
智に気付かれてしまった。
小さい男だって呆れられたかなとちょっと心配になったけど。
クスクス笑われたらますます拗ねた気持ちになって。
「笑うなよ」
「ふふっ、だって潤が可愛いんだもん」
「可愛いのは智だろっ!」
「ふふふ…俺、潤と作るのすごく楽しみにしてるからね。早く予定決めようね」
「……ああ」
すっかり不貞腐れてたのに、智ににっこり笑い掛けられたら、俺の機嫌は簡単に直ってしまった。
俺って単純だな…
「本当にすごいね!とても手作りには見えないよ!」
「ありがと///」
「これはもったいなくて食べれないな」
「やだ!食べない方がもったいないから食べて?はい、あーん♡」
「あーん…うまっ!マジでうまいよ!」
「良かったー♡」
バカップルからは、いつかと同じような会話が聞こえてきて。
ちらりと視線を向ければデレデレとだらしない顔をした翔が見えた。
はたから見て、俺もあんなだったらやだなと思うけど。
「はい、潤も食べてみてよ」
クッキーを差し出してくれる智はめちゃくちゃ可愛くて。
自然と頰が緩んでいくのが分かる。
まぁ、幸せなんだから仕方ないか。
そう自分に言い訳して。
甘い甘いクッキーを幸せな気分で頬張った。
end