第16章 おとぎのくにの 8
やがて馬車は大きな噴水のある広場前に出た。
その広場に面した一角に教会があるのが見える。
孤児院は教会に併設されていると聞いていたけれど、馬車は教会の前を通り過ぎて裏にまわり込んでから止まった。
そこに孤児院の入口があった。
門のところで優しそうなご老人と子どもたちが待ち構えている。
きっとあのご老人が院長なのだろうと思う。
「さとさま!」
「ユーリ!」
馬車から降りるとユーリが駆け寄ってきて、ぎゅっと私の手を掴んだ。
前回は戸惑うばかりだったけれど、今回はすんなり受け入れられる。
「ほんとうにきてくれた!」
「だって約束したもの」
「うん!またあえてうれしい!」
「私も嬉しいわ」
まっすぐな言葉とキラキラした瞳が彼の喜びを伝えてくれる。
これだけ喜んでもらえると来てよかったと思える。
ユーリの笑顔を見ていたら自然と緊張も解けていって、ほんわかとした気持ちになったのだけれど。
「いんちょうせんせい、さとさまだよ!」
私たちのやり取りを呆然と見ていたご老人にユーリが声を掛けると、院長はハッと我に返って慌てだして。
「こら!ユーリ!離れなさい!」
「やー!さとさまー!」
無理やり引き離されそうになったユーリがしがみついてくる。
先日と全く同じ展開に思わずクスッと笑ってしまった。