第3章 キミ色フォルダ Root Yellow
叶わない恋をしてる。
ずっとずっと、見ているだけの恋を。
放課後のざわついた教室。
「雅紀!帰りカラオケ行かね?」
「ごめん、今日はデートなんだ」
仲間の誘いを満面の笑みで断る雅紀。
俺の大好きな笑顔。
でもその口から出る言葉は残酷だ。
「くそー!幸せそうな顔しやがって!」
「なんでお前だけあんな可愛い彼女がいるんだよ!」
幸せそうな顔でヘラヘラ笑う雅紀を、みんなしてどついたりヘッドロックしたりして揉みくちゃにする。
俺はそれを少し離れて笑って見てる。
ただ見てるだけ。
雅紀とは友だちだけど、意識して必要以上には近づかないし、触れないようにしてる。
だって、ちょっとでも触れたら気持ちが溢れてしまう気がするから。
それにこんな想いを抱いてる俺に触れられたら気持ち悪いんじゃないかって…
もちろんバレないように全力で隠しているけど、それでも本来ならありえないだろう恋心はどこか後ろめたくて。
少しでも雅紀に不快な思いはさせたくないから。
だから、やっぱり触れられない。
ただのクラスメイトだったのに、いつの間にこんなに好きになっちゃったんだろう。
最初は馬鹿みたいに大きな声にびっくりして、うるさいなって思って振り返っただけだった。
そしたら、目に飛び込んできたのは太陽みたいな笑顔。
その笑顔に一瞬で心を奪われて。
気が付いたら目が離せなくなってた。
裏表のない性格、嘘のない優しさ、ちょっと心配になるくらいお人好しなところ…知れば知るほど惹かれていった。
でも、雅紀のことを悪く言うやつを見たことがないくらい性格が良くて。その上、背が高くてイケメンで運動まで出来る雅紀は、当然のように女子にモテまくってて。
俺のこの気持ちが恋だと気付いたときには、もう雅紀には可愛い彼女がいた。
でも例え、そのとき彼女がいなかったとしてもどうにもならない。
これは最初から終わっていた恋だから。