第14章 おとぎのくにの 6
サトは俺の肩書きなんて気にしていなかった。
最初から必要以上にへりくだることも媚びを売ることもなく、俺が王子であることをなんとも思ってなさそうだった。
友だちになろうと告げた時はすごく喜んでくれたけど、それも王子とお近付きになれたから嬉しいんじゃなくて。
初めて友だちが出来たことを純粋に喜んでるだけだった。
まぁ、サトは父親がこの国一番の大貴族で母親が現国王の妹という公爵家の一人娘で。
文句なしに身分は高いし、そもそも俺たちとは従兄弟の関係に当たるからって言うのもあったかもしれない。
でも、生まれてから一度も屋敷の外に出たことがなければ、家族以外の同世代の子どもと会ったことがないという、ちょっと特殊な環境で育ってきたサトは本当に純粋で。
ちょっと変わってて。
そういう性格的なものが大きい気がする。
サトは一見完璧な令嬢なのに、素に戻ると言葉遣いが雑で。ちょっと男っぽいというか。
でもそれは実は男だったからというより、お兄さんたちの影響だろうなと思う。
侍女たちの目を盗んで部屋を抜け出したり、庭の地面に直に寝転んで昼寝してみたり。
ドレスのまま木に登ったりもしてたな。
そんなの普通の令嬢ではありえない行動だけど、無邪気に楽しむサトはすごく可愛くて。
その自由さにすごく惹かれた。
サトの前では俺も何も取り繕わなくて良かった。
ありのままの自分でいられた。
サトはいつだって俺のことを1人の人間として見てくれて。
ただのショウを好きになってくれた。
他の令嬢と比べれば比べるほど、サトの良いところが見えてくる。
サト以上の令嬢なんていない。
サト以上に好きになれる令嬢なんていない。
そんな思いが強まっていく。
サトは男なのに…
結婚は出来ないのに…
受け入れたくないけど、それが変えようのない現実だと言うことは分かってるのに。
それでもサトに会いたかった。
もう一度サトの笑顔が見たかった。
もう会えないなんて信じたくなかった。