第14章 おとぎのくにの 6
「だから、婚約破棄はしないとサトちゃんとカズちゃんに伝えに行ってきたのでしょう?」
母上は同じ言葉を繰り返したけれど、やっぱり意味が分からない。
「………え?」
「………え?」
首を傾げる俺を見て、母上も首を傾げる。
「陛下の話を聞いてすぐに城を飛び出したと聞いたわ。サトちゃんたちと話をしに行ったのでしょう?」
「……はい」
確認するように尋ねられて、それはその通りだったので素直に頷く。
「陛下と公爵は婚約をなかったことに…なんて仰っていたけれど、急にそんなこと言われたってそんなの簡単に受け入れられるわけないものね」
「……はい」
うん、ここまでは分かる。
「だから、破棄はしないってサトちゃんたちに言って来たんでしょう?」
でも、なんでここに話が飛ぶのかが分からない。
返事をしない俺に嫌な予感がしたのか、母上の顔が険しくなる。
「……まさかと思うけれど、婚約破棄を唯唯諾諾と受け入れたんじゃないでしょうね?」
「……………」
あまりの剣幕にすぐには答えられなかったが、沈黙が肯定だと言っているようなものだった。
「何をやっているのです、あなたたちは!!」
母上はキッと目を釣りあげると怒りを爆発させた。
「あんなに可愛いお嫁さん、他のどこにもいないわよ!!何あっさり諦めているの!!」
母上はサトとカズをとても気に入っていて。
俺たちの婚約をとても喜んでいた。
娘になるのをとても楽しみにしていた。
だから婚約破棄を嘆くのは分かる。
でも、ふと疑問が浮かんだ。