第13章 おとぎのくにの 5
話がひと段落して。
すっかり冷めてしまったお茶を入れ直してもらった。
あったかい紅茶を一口飲んだら昂ってた気持ちが少し落ち着いた気がする。
カズは給仕に戻ろうとしてたけど、どう見ても給仕が出来る状態には見えなくて。
固辞するのを押し切って、私の隣に椅子を運んでもらって無理やり座らせた。
カズは落ち着かなさそうにしてるけど、妹になるんだもん。
これからはこれが当たり前になるんだから、給仕されることにも慣れてもらわなきゃね。
…なんて。
まだカズは返事をしてないけど。
でも浮かれてるのは私だけじゃない。
「サトとカズ、2人お揃いのウエディングドレスを着て合同で式を挙げられたら素敵よね」
お母さまの中では、カズを娘にすることも、ジュンと婚約することも確定事項になっているようで。
私の比じゃないくらい浮かれてる。
「王妃さまとも相談しているのよ」
カズが困った顔してるのも、お父さまとお兄さまたちが想像したくないと耳を塞いでるのも見えてないみたいに、楽しそうにうふふと笑ってる。
あー、王妃さまも絡んでるんだ。
そりゃそうか。
こりゃカズは逃げられないな。
…ま、逃げる必要なんてないんだけど。
そりゃあね、カズがジュンのこと何とも思ってないなら。
王家に嫁ぐなんて絶対嫌だと言うなら。
それなら私だって強制しようとは思わないよ。
そんなことしたって、カズが幸せになれないからね。