第13章 おとぎのくにの 5
-サトside-
最近ちょっと忙しい。
今日は朝からダンスのレッスンで。
「サトさま!背筋を伸ばして!もっと姿勢を正してくださいませ!」
「はいっ」
「サトさま!もっとにこやかに!」
「はいっ」
ダンス自体は楽しくて好きなんだけど、厳しい先生に毎回ビシバシしごかれて。
今日もレッスンが終わる頃にはクタクタに疲れ果てていた。
「あぁ…疲れた…」
部屋に戻ってすぐお気に入りのソファに身を沈めて、やっとホッと一息つく。
そんな私を見て、カズはすぐにお茶の準備を始めてくれたけど。
「サトさま、昼食後はドレスの仮縫い。その後、お靴と装飾品も選ぶことになっています」
お茶を淹れながら午後の予定を告げるから、ため息を吐きそうになった。
………訂正。
ちょっとじゃなくて、かなり忙しい。
「サトさま?聞いてらっしゃいますか?」
「はいはい、ちゃんと聞いてるって」
「“はい”は1回ですよ!」
「……はぁい」
背もたれにくたっと凭れ掛かりながらの投げやりな返事を聞いて、カズが苦笑する。
「お疲れなのは分かりますけど。そんなお姿を見せるのは、私の前だけにしてくださいね」
「……はぁい」
「いろいろ大変ですけど、全部ショウさまのためです!頑張りましょう!」
気のない返事をする私にはお構いなしに、カズは満面の笑顔でグッと拳を握った。
……そう。
この忙しさはみんなみんなショウのためなんだ。