第1章 おとぎのくにの
おまけ
「やっぱりショウね」
「そうね」
別れを惜しむ子どもたちを見守りながら、王妃さまと奥さまは何やらひそひそ話しております。
「決まりね」
「城に帰ったらすぐ陛下にお話しするわ」
「私も旦那さまに話すわ」
2人ともとても楽しそうです。
「昔交わした約束がやっと叶うわね」
「本当ね、楽しみだわ」
『いつか私たちの子ども同士を結婚させましょう』
王妃さまと奥さまは、結婚するだいぶ前からそう約束していたのです。
「でも、サトは男の子だから赤ちゃんは産めないわね···それだけが残念だわ」
「それは仕方ないわよ。結婚出来るだけでも良しとしなきゃ」
どうやら王妃さまもサトさまの秘密を知っているようです。
「ショウは第6王子だから、別に跡継ぎが産まれなくても困ることはないしね」
さすがは親友。
王妃さまも奥さまと同じ感覚の持ち主のようです。
サトさまが男なのに女として育てられていることに、なんの疑問も抱いていません。
「ジュンはカズちゃんを気に入ったみたいだけど、こちらの婚約は難しいかしら」
「カズの家も貴族ではあるけど格が···もし2人が本気で結婚したいと言ってきたら、その時考えましょ」
「そうね、旦那さまたちにお願いすればなんとかなるわね」
奥さま同士の間で決められたショウ王子とサトさまの婚約の話は、すぐに国王と公爵さまに伝わります。
話を聞いた公爵さまは卒倒しそうになりましたが、サトさまにとってはこの上ない良縁。
国王にとっても、家柄的には何も問題なく、何より可愛い妹の一人娘。否を言う要素は何一つありません。
こうして、本人たちの知らぬところで婚約話はトントン拍子に進んでいったのでした。