第11章 キミ色フォルダ Root Green
朝、学校に向かう途中、前方に見つけた背中。
少し猫背の、折れそうなくらい細く華奢な後ろ姿。
「おはよ、ニノ」
大股で近付いて声を掛けたら、びっくりしたように顔を上げて。
俺と目が合うとふわっと笑った。
「おはよ、雅紀…」
少し照れたような笑顔がめちゃくちゃ可愛くて。
「……っ、宿題全部出来た?俺分かんないのがあってさ…」
「ちょっと、声大きいよ!」
ドキッと跳ねた心臓を誤魔化すように話しかけたら、声のボリュームを間違えたらしい。
「そんな大きかった?ごめん…」
慌てて声をひそめると、呆れ顔で文句を言ったニノがクスクス笑い出した。
口元に手を当てて笑うのがまた可愛くて。
「俺一応全部解けたから、学校着いたら教えてあげるよ」
合ってるか分かんないけどね…なんて、ちらりと俺を上目遣いで見てくるのも可愛くて。
いやいや、朝から何回ニノのこと可愛いって思ってるんだ俺は…少し落ち着け!
ニノは男で、同級生で、友だちで。
元はそんなに仲良くなかった。
仲良くないっていうか、一方的に距離を置かれていたというか。壁があったというか。
別に全く喋らないとか、あからさまに避けられてたとかではないんだけど。
一定以上は近づいて来ないし、ほんの少しも俺に触れることはなくて。
周りから不自然に見えないくらいの絶妙な距離を常に保っていた。
俺は当事者だったから。
ちょっと鈍感とか言われることが多いけど、さすがに気付いて。
もしかしたらニノは俺のこと嫌いなのかもしれないな…って、ちょっとさみしく思ってた。