第9章 おとぎのくにの 4
-カズside-
「うん、美味しい」
紅茶を一口飲んだサトさまがにっこり笑った。
ここはお屋敷の庭にある東屋の一つ。
少し前にショウさまジュンさまと秘密の場所でお茶会を開いてから、サトさまは外でのお茶会がお気に入りで。
天気が良い日には、よく外でお茶を飲むようになった。
「ほら、カズも早く座って。1人で飲むよりカズと飲んだ方が絶対美味しいんだから」
「はい、失礼します」
サトさまに急かされて、急いで自分の分の紅茶も淹れると、向かいの席に腰をおろす。
「いただきます」
「召し上がれ…って、淹れたのはカズじゃない」
クスクス笑うサトさまにつられてふふっと笑いながら、私も紅茶に口をつけた。
ふわりと香味が鼻に抜ける。
「美味しい」
「ね、美味しいね」
「今日は先日ショウさまにいただいた茶葉を使わせていただいたんですよ」
「そうなんだ…今度改めてお礼を伝えなきゃね」
ショウさまの名前を聞いたサトさまは嬉しそうにはにかんだ。
ショウさまのことが本当にお好きなんだな…とほっこりした気持ちになる。
でも、その笑顔はすぐに陰ってしまった。
「本当は今日一緒に飲めたら良かったんだけど…」
紅茶に視線を落としながらポツリと呟いたその声はとても寂しそうだった。