第2章 きみがため
「ちょっと待った名人!この子何か持ってる!」
永夢が気道を確保しようとすると、貴利矢が握られていた郷未の手を開き、中のガシャットを引き抜いた。
「さっきまでこんなのなかったよね……あのバグスターが消えた時に生まれたのかな?」
考察を始める貴利矢と明日那。取り残された永夢を、飛彩が手を止めるなと一喝し、人工呼吸に取り掛かる。
「何のゲームかわからないけど……きっとあの娘の対応ガシャットだよ。これなら郷未ちゃんを救えるかもしれない!」
明日那が希望を見出すと、けたたましく警報音を鳴らしていた心電図が、一転、落ち着きを取り戻した。
……にも関わらず、処置にあたっていたドクター達の表情は浮かない。それどころか、暗く沈んでいた。
今にも泣き出しそうな永夢を見て、大我のみ何が起こったのか悟った。
郷未は、筐体の上で虚ろにただ一点を見つめていた。
呼吸・心拍・脈拍共に正常。しかし、一定時間脳への血流が止まったことで、大脳がダメージを負ってしまったのだ。
誰が見ても分かった。やはりあのバグスターは郷未の半身で、宿主の生命を繋いでいたのも彼女だった。
『植物状態で済んだのはむしろ幸運だった』のだと。