第2章 朔
一際大きく身体が痙攣すれば、それに合わせるように弓なりに反り返る。
合わせて。
口元を塞ぐ掌は宙をかいた。
そのせいで漏れ出た声を塞ぐのは、しーちゃんの熱い唇、で。
昇華した熱が収まり身体が脱力しても、しーちゃんは唇を解放などはしてくれなくて。
酸素までも根こそぎ奪うような荒い口づけは、指の本数を増やされ、さらに弱いところを責め続ける執拗な指での愛撫が終わるまで、続けられた。
「……っ、は……っ」
モヤがかかったように、視界がぼやける。
手も足も、すでにその意志を放棄しているみたいだ。
頭でさえも、指令が降りてこない。
「何回イった?、花」
「しら、な……っ、わかんな……」
「どろどろだね、花。でもまだ、だよ?」
「…………」
「澪たちならたぶんさっき帰ったから、もう声我慢しなくていいよ」
「え」
「気使ったんだと思うよ?」
「気?」
「何してるか、バレたかな」
「……………っ!!」
嘘。
嘘。
――――嘘っ!?
「花のその泣きそうな顔、ほんといいね。癖になるわ、まじで。」
「しーちゃん」
「うん、今からちゃんと、もっともっと啼かせてあげる」
「……ま、って、今……っ、無理………!!や、ぁぁぁっ!」
しーちゃんの行為に、『愛』を感じたことは1度もない。
『愛してる』。
その言葉に意味なんてないの、ちゃんと知ってるから。
しーちゃんが満足するまで、花に拒否権なんてないんだ。
花は、しーちゃんの、おもちゃ。
20歳の誕生日。
改めて認識した事実に、心が押し潰されていくのを感じながら。
勝手に壊れて、押し潰された感情も、記憶も、アルコールと一緒に流れていくのを、心の底から願って。
ガンガンする頭も。
気持ち悪いこの気分も。
自分勝手なこの行為も。
早く終わりにしたくて。
意識ごと、全部闇の中にほおりなげた。